未来を形作る、30年の信頼と実績 Shaping the Future, 1996–2026

ご挨拶

Message

2026年3月22日、株式会社HiSCは設立30周年を迎えます。お客様やお取引先様のご支援、そして社員一人ひとりの尽力のおかげで、ここまで歩んでこられました。
心より感謝申し上げます。

代表取締役社長 小山内拓
01 30th Anniversary
History of HiSC

創業の原点

消極的な起業からのスタート

私が27歳のとき、株式会社HiSCの前身となる「有限会社北海道情報システムコンサルタンツ」を札幌市北区にたった一人で設立しました。平成8年(1996年)3月のことです。

26歳で勤めていた会社を衝動的に辞め、個人事業としてプログラマーをしていました。当時のクライアントサーバーモデル(いわゆるクラサバ系システム)においては、それなりにコードを書くことができたと思います。

前職でのご縁もあり、一人で生活できる程度の仕事はいただいていました。しかしあるとき、お客様から「個人だと支払いが難しいので、法人にしてほしい」と言われたことが、会社を設立する直接のきっかけでした。

(社員が増えて作った札幌システムセンターのあったビルGoogle Maps

華々しいビジネスモデルや画期的な商品企画があって始めたわけではありません。必要に迫られて「そっと起業した」、振り返ればこれが私にとっての“消極的な起業”でした。

当時は最低資本金制度があり、株式会社は1,000万円、有限会社でも300万円が必要でした(現在では1円、実質0円でも設立可能です)。

私は親から100万円を借り、手持ちの現金や車、パソコンなど身の回りのものをすべて現物出資して、なんとか300万円の資本金を整えました。本店登記は自宅。電話を引いただけの、まったくゼロからのスタートでした。そのときの情景はいまでも鮮明に覚えています。

02 30th Anniversary
History of HiSC

若さと勢い

文字通り「馬車馬」のように働く日々

当時の私は、「馬車馬のように働く」ことに何の抵抗もありませんでした。懸命に仕事をすれば評価していただける――その喜びが原動力となり、さらに仕事へ没頭する日々でした。

そんな中、「システム導入のインストラクターを探しているが、そちらから出せないか」という依頼をいただきました。これが、社員を採用するきっかけです。

ハローワークに求人票を提出すると、幸運にも応募がありました。しかし、面接を行う場所がありません。今では考えられませんが、私はハローワークの担当者に「会議室を貸してもらえませんか」と直談判しました。

担当者は驚きつつも了承してくれ、その場で面接を行い、即採用を決定しました。振り返れば冗談のような話ですが、当時はそれが“普通”に思えるほど必死でした。

その後も、「人材採用は会社の社会的責任である」という妙に強い信念のもと、中途採用・新卒採用を続けました。設立3年目には、社員10名の会社へと成長していました。

(初めて本店を登記したビル/現在は取り壊し済み Google Maps

毎年3月になると大学の学生課に赴き、「就職先が決まっていない学生を紹介してほしい」とお願いしました。紹介いただいた学生をその場で面接し、採用を決める――今の売り手市場では信じがたいことですが、当時の私は真正面からぶつかっていました。

03 30th Anniversary
History of HiSC

迷走の始まり

10人の社員を食べさせる仕事がない

創業から5〜6年は、前職でのつながりや紹介により仕事があり、社員10名体制を維持できていました。しかしある日、ふと気づいたのです――「社員10名を食べさせるだけの仕事がない」。これは、致命的な現実でした。

「良い仕事をしていれば自然と仕事は来る」という、技術者出身の社長にありがちな思い込み。今思えば、まさにもうまいでした。

ようやく営業活動の必要性に気づき、各種団体に所属して人脈を広げ、そこから仕事を得ようとしました。しかし次第に「人脈作りそのもの」に傾倒してしまい、いわば「ミイラ取りがミイラになる」状態に陥ります。

その結果、これまで共に支えてくれた社員が、櫛の歯が抜けるように辞めていきました。仕事は少しある。しかし社員はいない。自分一人では限界がある――完全に「人」の自転車操業でした。

かつて掲げていた「人材採用は社会的責任」という信念も、どこかへ消え去り、会社の軸は大きく揺らいでいました。そして迎えた2009年6月期。売上は2,500万円に対し、最終赤字は950万円――惨憺たる決算です。

迷走と墜落寸前までの売上・利益の推移 迷走と墜落寸前までの売上・利益の推移

しかし、どれほど赤字が大きくとも、キャッシュフローさえ途切れなければ、倒産はしない――この事実にすがりつくしかありませんでした。給与、取引先、金融機関への支払いさえ止めなければ、会社はかろうじて生き延びることができたのです。

もちろん、赤字を抱えた状態でキャッシュを確保するには相当な無理がありました。ここには書けない方法で調達した現金もあります。まさに「金」の自転車操業でした。やがて、「キャッシュフローをどうつなぐか」だけが目的となり、会社としての本質を見失ったまま、ますます自滅への道をたどっていきました。それでも、支払い不能=倒産だけは何とか免れた――この一点だけが、今振り返っても本当に幸運だったと思えます。

私は、この不毛な期間を今でも「自分にとっての失われた10年」と呼び、深く反省しています。

04 30th Anniversary
History of HiSC

心を高める

会社の姿は、社長の心の映し鏡

倒産寸前に追い込まれたことで、私はようやく自らの心と向き合わざるを得なくなりました。日ごろの態度、人間性、考え方――すべてが間違っていたからこそ、この状況に至ったのだと痛感したのです。

まず、支出を1円単位まで洗い直し、不要不急の定期支払契約はすべて解約しました。事務処理も自ら行い、徹底的にコストを削減。そのうえで、「自分の心をどう高めるか」に集中しました。

幸か不幸か、この頃には仕事の量も減っており、時間だけはありました。私は本を貪るように読み始めます。中国や日本の古典、歴史的名著、さらには師であり尊敬する稲盛和夫氏が主宰していた「盛和塾」の機関誌――一冊残らず読み込み、心を高めることに努めました。

そうした学びの中で考え方を改め、誠心誠意仕事に向き合うよう努めた結果、減っていた仕事も少しずつ戻り始め、新たな仲間を迎えることもできました。墜落寸前だった会社は、ようやく少しずつ持ち直し始めたのです。

私はこの経験から、「一意専心、仕事に向き合い、その姿勢を糧として心を高め続けること――これ以外に会社を安定させ、未来へつなげる道はない」という信念を、ようやく自分のものにすることができました。

05 30th Anniversary
History of HiSC

経営理念の変遷

理念も歴史を経て

会社は無生物です。そのため、人でいう性格や生き方にあたるものを吹き込むために、経営理念が存在しなければなりません。これは会社設立当初から私が思ってきたことです。

現在の経営理念は以下のとおりです。

現在の経営理念

このほかに、「HiSCの綱領」と、社内向けに「物心両面の幸せ実現のための5つの指針」を定めております。

実は、この経営理念は三代目、3度の変遷を経てここに至りました。社長である私の心の変遷を映しているようでもあり、あえて過去の理念も振り返りたいと思います。

初代の経営理念

初代の経営理念

The Forefront!

私たちは、自分自身のバランスの取れたスキル向上が、お客様に利益をもたらし、それが会社の発展、社会への貢献、さらに自分自身への経済的なフィードバックとなることを理解し、株式会社HiSCの一員として次の理念を遂行いたします。
我々は技術業ではない、接客サービス業である。お客さま、エンドユーザー様一人一人の視点に立ったサービス提供を行う。
一人一人が接客、技術、営業のバランスのとれたスタンドプレーヤーとなる。技術、サービス、接客全てにおいて、Forefront(最高、最先端)である。

初代の経営理念

自分自身がプレイングマネージャー(というかプレーヤー)として働いていた当時、降って湧いたように一気に作ったのが初代の理念です。

今読み返すと、「俺も一生懸命働くから、社員のお前たちも頼むよ。お客様のために懸命に働くことが使命だよ」といった、ともすると苛烈に働くべし、という思いがにじみ出ています。

当初は壁に貼って社員に見てもらっていましたが、いつの間にかほこりをかぶり、倉庫に追いやられてしまいました。このような、社長の利己心から生まれた理念を掲げていたことが、前述の「失われた10年」を迎えた遠因のひとつであったと考えています。

二代目の経営理念

二代目の経営理念

パートナーシップで実現する
幸せ創造企業

社内のパートナーシップ

お互いに協力し合い、技術力と人間性を高め、物心両面の幸せを実現しよう

お客様とのパートナーシップ

お客様に感謝と尊敬をいただけるよう、一つでも多くのお客様の幸せを提案しよう

お取引先様とのパートナーシップ

お取引先様と共に協力し合い、お互いに発展できる幸せを実感しよう

社会とのパートナーシップ

広く国際社会にまで目を向けて、その進歩発展と幸せ創造に関わっていこう

二代目の経営理念

深い反省のもと、「これではいけない」と思い、一気に書き上げたのが二代目の理念です。

今までないがしろにしてきた従業員に思いをはせ、会社円満、従業員満足第一主義を掲げました。この理念は長く浸透し、会社に存在感を与え続けたと思います。

しかし、次第に「パートナーシップ」だけでは安住してしまい、円満は確保できても、高尚な目標に向かって皆で会社を高めていく機運は生まれませんでした。いわば「ゆでがえる」の状態です。危機感を抱き、指摘も受けるようになりました。

30周年に向け、さらに高い目標に挑むため、三代目の理念を制定しました。

会社全体でそれぞれ自分自身を高め、お互いを おもんぱかって、目標や課題に真摯に取り組む。その先にある高い物心両面の幸せの実現と、社会的責任の徹底を果たす――これを明確にしました。

書家泉田佑子先生に揮毫いただいた一意専心・寛容
06 30th Anniversary
History of HiSC

次につなげる

2035年に向けて

2026年3月22日をもって、株式会社HiSCは満30歳を迎えます。ここまで続けられたのは、お客様、お取引先様、そして何よりも社員の皆さんのおかげです。

さまざまな出来事がある中、本当にここまで続けさせていただいてよかったと、深い感謝の思いでいっぱいです。

HiSCでは、次の10年に向けて次の目標を掲げました。

「唯一無二の大企業へ ― Become the Great HiSC by 2035」

荒唐無稽に聞こえるかもしれません。しかし、これまでの30年の責任を果たすには、会社をさらに安定させ、立派にし、次世代につなげることが必要だと強く考えています。

現状維持は必ず衰退に向かいます。であれば、より高く、公明正大な目標に向かって垂直登攀する――これしかないと考えています。

まずは自分の中で、この無謀ともいえる目標への道筋を描き、社内で共有し、具体化していく所存です。

心を高める、経営を伸ばす――稲盛氏が常におっしゃっていたキーワードを胸に刻み、努力してまいります。

これからもご指導ご鞭撻のほど、衷心よりお願い申し上げます。満30年を迎えるにあたってのご挨拶とさせていただきます。

代表取締役社長 小山内拓
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